Faculty教員・連携体制

03.教員からの声

プログラムリーダーからのメッセージ

鈴木 健嗣
システム情報系 教授

プログラムリーダー システム情報系 鈴木 健嗣 教授

私が2005年に筑波大学に赴任したとき、人の知能と機械の機能を融合させることで人を支援する新しい研究を行うため、人工知能研究室を立ち上げました。人工知能とは、人を支援するためには、人の理解が必要不可欠です。人をエンパワーする技術とは、すべての人がその人らしく自由に生きる力を与える技術であり、人工知能研究も大きく関わりがあります。本プログラムに相当する学問領域は、人工知能も含む学際的な「人間情報学」です。ここでは、情報学や工学に加え、心理学、医学、芸術学との学際的な連携により、人をエンパワーするシステムをデザインできる能力を身につけるための体系的な博士人材育成を目指しています。また人材養成目的で定めたコンピテンス(能力)は、グローバルリーダーに必要な資質といえます。これは、俯瞰力と複眼的な思考力をあわせた「分野横断力」、技術や問題の本質を理解し表現する「魅せ方力」、チームとして異なる背景の人々と共に目標を達成する「現場力」からなります。「リーダー」は役割のことですが、「リーダーシップ」は、才能ではなく身につけられるスキルです。「アントレプレナーシップ」も同様です。ここでは、大学での基礎研究や技術を社会に実装するための知識や手段も学ぶことができます。是非、世界を少しだけでも変えるために自身を磨く機会にして下さい。

担当教員からのメッセージ

岩田 洋夫
システム情報系 教授

システム情報系 岩田 洋夫 教授

私が1986年に筑波大学に赴任した当時、世界に先駆けて「ハプティックス」すなわち触力覚の提示技術に関する研究領域を立ち上げました。
触力覚は体験しないと理解が困難な感覚であるため、実演という発表形態に重点を置いてきました。その取り組みを通じてこの領域の研究者が増え、2005年にはWorld Hapticsという世界大会を実現させました。
新技術を世に広めるためには、ピアーの枠を超えて広く社会との接点を持たなければなりません。そこで、技術の本質をアートにする「デバイスアート」という表現様式を提唱しました。優れた技術であっても適切に表現しなければ実験室に埋もれてしまいます。グーテンベルグは最初に印刷術を発明した人ではありませんが、フォントとコンテンツの秀逸さによって歴史に名を遺しました。このことは重要な意味を持ちます。
私のこれまでの活動から導き出せる、グローバルリーダーに必要な資質は、技術の本質を適切に表現する「魅せ方力」、体験可能な展示を完成させる「現場力」、そして工学とは異質な評価体系を持つ芸術との「分野横断力」です。これを、人をエンパワーするシステムのデザインという広い枠組みの中で、体系的な人材育成を目指すのが本プログラムです。

山海 嘉之
補完領域サブリーダー
システム情報系 教授

補完領域サブリーダー 山海 嘉之 教授

文科省主導によるグローバルCOE【サイバニクス:人・機械・情報系の融合複合】によって人支援技術分野における未来開拓型人材育成フレームワークや国際教育研究基盤の枠組みが整い、今、学位プログラムとして、人の自立的な生活を支援し人類社会が抱える共通課題の解決に向けた「エンパワーメント情報学」プログラム「補完領域」へと発展してきました。素晴らしいことです。
補完領域では、加齢や疾患や外傷などによって身体機能に障碍(しょうがい)がある方の機能補完を主軸とした領域開拓・人材育成を目的としてカリキュラムが用意されます。
本領域では、人を物理的・認知的に補助・補完するために必要とされる様々な人・ロボット・情報系の融合複合分野の学問領域を習得することに加えて、医学・ビジネス・心理・芸術領域などを分野横断するコースワークや、アドバンストチュートリアル演習など、協調・拡張領域も含めた様々な学びと実践の取り組みを行います。
これを通して、革新的な人支援技術の開発能力と実践的な研究力を同時に培うことが狙いです。
世界規模の課題解決に向けて情熱を持ち世界を牽引するリーディングドクターとして、この学位取得プログラムで自分を鍛えあげてくれるものと期待しています。

稲垣 敏之
協調領域サブリーダー
筑波大学副学長
システム情報系 教授

協調領域サブリーダー 稲垣 敏之 副学長・教授

本プログラムには3本の柱がありますが、そのうちのひとつが「協調」です。ここでいう協調とは、人が接する人工物を人と一体化するように調和させることです。
人工物の例として、自動車の運転支援システムを考えてみましょう。80キロほど離れたところで開催される重要な会議に出席するため、車を運転して移動中であるとします。適度な緊張感もあって自分自身での運転を楽しんでいたところ、前方に予期せぬ渋滞が発生しているのに気づきました。このままでは会議に遅れるかもしれませんので、別ルートを探すことにしました。しかし、これは運転しながらできる作業ではありません。このようなときはシステムが運転を「代行」してくれると助かります。
さて、新しいルートに移って運転を続けているうちに疲れが出てきたとしましょう。もし、足や腰を伸ばしてリフレッシュしようとするなら、ペダル操作から解放される必要があります。速度制御と車間制御の役割をシステムに「分担」させるわけです。また、死角に入っている車に気づかないまま車線変更をしようとしたときは、システムがステアリングを重くするなどしてさりげなく「警告」してくれると助かります。あるいは、先行車が突然急ブレーキをかけたとき、あっと思ったもののブレーキがかけられない場合にシステムが自動ブレーキをかけて「バックアップ」してくれるしくみがあると命拾いします。
このように、人の心身状態や周辺の状況に応じて、機械は人を支援する形態をさまざまに変える必要があります。そのための理論や技術を生み出していこうというのが協調領域の目指すところです。皆さんも一緒に考えてみませんか?

加藤 和彦
拡張領域サブリーダー
システム情報系 教授

拡張領域サブリーダー 加藤 和彦 教授

本学は「新構想大学」として開学し、開学時の大学院は修士課程(2年)と博士課程(5年一貫)に分かれていました。入試も別々、カリキュラム運営も別々に行われていました。私は約30年前に博士課程工学研究科に入学しましたが、幸いにも日本育英会(現在の日本学生支援機構)の奨学生となることができました。奨学生の期間は、大学院期間の全5年間であり、これで5年間、好きな研究に没頭できると、大学院合格と同様かそれ以上に嬉しかったことを覚えています。
また、私が所属していた研究室は、3つの研究室が緩やかに連合していて、教員と学生の自主的な交流が活発でした。そのお陰で私は、自分の専門分野だけでなく、関連3分野に関する知識を学び、また、それらを専門とする素晴らしい先生方や、優秀な先輩・後輩達と議論を戦わせることができました。このような環境が極めて恵まれたものであったことは、私が筑波大学を離れてみてわかったことです。
このエンパワーメントプログラムは、30年前に私が偶然出会うことができた環境を、さらに何倍も「エンパワー」して作られている素晴らしい環境です。研究・教育に加えて自然にまで恵まれたこの環境で、充実した学生生活を送りながら、素晴らしい研究成果を上げると共に、未来のグローバルリーダーにふさわしい人間的な成長を遂げてくれることを願ってやみません。